365日のIN/OUT

アラフィフの女が毎日モノを捨てる日記。2年目

Day92: 本「決壊 上」平野啓一郎

OUT #92 本「決壊 上」平野啓一郎

平野啓一郎はデビュー時から大好きな作家だ。歳のそう変わらない京大の法学部生がこんなギリシャ神秘思想を下敷きにした擬古文調の作品を書いたなんて衝撃で、当時しがない私大の哲学科学生だった私としては「日蝕」を読みめちゃめちゃ打ちひしがれたし嫉妬した。クラスメイトもちょっとザワついていた。

初期のロマンチック三部作まではリアルタイムで追っていたが、近年は忙しさを理由にして読書から遠ざかっていたのもあり、平野作品も読んでいなかった。この本も買ったものの10年以上そのままにしていた。やっと先日読み始め、一気に読み切った。

近年、ビジネス書・実用書、小説は翻訳物のSF小説や娯楽小説くらいしか読んで読んでいなかったのだが、久しぶりの平野啓一郎作品は圧倒的な表現力と物語力で、冒頭5ページ読んだだけで「違うな…」と感じた。私個人の考えながら、存命作家で1番文章が上手いと思った。今の「純文学」の正統派最高峰だと思う。(純文学には実験的な表現を追求する分野もあるので、そちらとは分けたい。とはいえ平野氏も「滴り落ちる時計たちの波紋」では実験的な表現にもアプローチしていたが)

久しぶりに平野作品に没頭して、素晴らしい時間を過ごせた。